EP16 薔薇色の大河【FE風花雪月】

ミルディン大橋の戦いで、
かつての学友と剣を交えることになった青獅子の生徒たち。
黒鷲の生徒だったフェルディナント。
金鹿の生徒だったローレンツ。
名門貴族の誇りを胸に、勇敢な突撃を見せてきた!

復讐心

ロドリグと合流したことで、
ディミトリたちは王国軍と呼べるほどにはなった。
帝都への進軍ルートも決まり、あとは戦のことを考えるのみである。

そのはずだが、ベレトは眠れない日が続く。
ある夜、大聖堂で考え事をしていると、
同じく眠れないロドリグがやってくる。

勝算が低いから眠れないというより、
復讐心に突き動かされているディミトリが気がかりなのだ。

ロドリグには自慢の長男がいた。
非常に優秀な跡取り息子だったが、
あのダスカーの悲劇で命を落とした。

ディミトリの親友であり、フェリクスの兄であり、
イングリットの婚約者であったグレンである。

父として兄への期待が大き過ぎたためか、
弟のフェリクスに心無いことを口走ってしまったらしく、
それが原因で今でも親子関係がギクシャクしているらしい。

なぜよりによって、グレンが死んだのか……。
フェリクスの前でこういう事を言ってしまったのだろうか。

ロドリグにはディミトリの復讐心が痛いほど分かるのだったが、

「あの方の復讐心を最後まで否定し続けてほしい

そうベレトに頼んだ。

死者の言葉は、現在を生きる人間を縛りつける。
フェリクスからそのことを教えられたのかもしれない。

罵倒

クロードから協力の了解を取り付け、
いよいよ帝国侵攻の足掛かりとなるミルディン大橋を攻める時が来た。

ディミトリはいつにも増して復讐心を燃え上がらせていた。

「ディミトリの復讐心を否定してくれ」

そうロドリグに頼まれたものの、ベレトにはなかなか難しかった。
そこにフェリクスがやってきて、復讐の愚かしさを説く。
説くというより、罵倒だった。

「こいつはもう手遅れだ」

そう言って突き放すのも、
ディミトリの目を覚まさせたい一心いっしんからかもしれない。

しかし、彼の心が変わる兆しは見えない……。

誇り

ミルディン大橋を守るのは帝国の女将じょしょうラディスラヴァで、
その意気は高く、各地から援軍を集め、
命に代えてもこの橋を守るという決死の覚悟が見えた。

レスター同盟からも親帝国派のアケロン、
学友であったローレンツが駆けつる。

しかし小兵力ながらも王国軍の勢いは凄まじい。
橋の上での戦いなので、数的不利が起こりにくく、
死んだと思われていたドゥドゥーが駆けつけたこともあって
敵の防衛戦を次々に突破していく。

戦況の不利が決定的になると、
ラディスラヴァは単騎で突撃してくるという勇猛さを見せた。
橋を奪われてはエーデルガルトに顔向けできない、
そう考えたのかもしれない。

彼女の死は後方の砦を守っていたフェルディナントに火をつけた

彼は帝国の名門貴族エーギル家の嫡子で、
学生時代はエーデルガルトに対抗心を燃やしていた。
家督を継いだかどうかはわからないが、
皇帝であるエーデルガルトが親政を布く現在の帝国では、
冷遇されている可能性が高い。

しかしフェルディナントは名家の誇りを胸に、
何としても橋を死守しようと突撃してきた。

駆けつけたローレンツもそうだったが、
彼らの突撃は狭い橋の上で各個撃破されてしまった……。

覚悟はしていた、かつての学友との戦い

矜持を持って挑んでくる彼らに、
こちらも同じ気持ちで挑まなければならなかった。

連鎖

ディミトリの身代わりになって死んだと思われていた
ドゥドゥーが生きていた

ダスカーの悲劇によって、
ファーガス王国から弾圧されることになってしまったダスカー人。
彼らへの差別も酷くなった。
しかしディミトリは周囲の目を気にすることなく、
ダスカー人のドゥドゥーを助け、信頼し、側に置いた。

そんなディミトリの恩に報いるために
命を投げ出したドゥドゥーだったが、
その彼もまた、同胞によって助けられていた。
学生時代、青獅子の生徒たちと一緒に、
王国軍から弾圧されるダスカー人たちを助けたことがあったのだ。

ドゥドゥーは同胞のダスカー人からは裏切者と見られていた。
ダスカー人を弾圧する王国に仕えていたのだから無理はない。

しかし、あの時に助けた恩のために命を救われ、
こうしてまたディミトリの前に姿を現した。

恩というものの、不思議な連鎖だった。
しかし、連鎖するのは恩だけではない。

かつてディミトリが処刑した敵将ランドルフ
彼は大事な妹を残しているとディミトリに命乞いしたが、
許されなかった。

兄を失い、妹のフレーチェはひとりになってしまった。
兄の後ろ盾を無くしたためか、事情はわからないが
帝国軍を去って、ここ王国軍の駐屯地に姿を現した。

兄の無念を胸に、ディミトリに復讐するためだった。

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