援軍を連れきたロドリグ。彼はディミトリに王都奪還を進言する。
今なお王土を守ろうと徹底抗戦している彼の言葉は重い。
しかしディミトリは「そんな暇はない」と一蹴する。
援軍要請
ロドリグからの援軍は「煉獄の谷」の異名をもつアリルに
到着するという一報が入った。
アリルは王国とレスター諸侯同盟の国境にあり、
人を寄せ付けぬ灼熱の地である。
この場所であれば、帝国に動向を悟られることなく合流できるだろう。
しかし、その情報は大修道院に紛れ込んでいた帝国の間者により、
筒抜けとなっていた。
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煉獄の谷と呼ばれるわけ
煉獄の谷アリルはひどく暑い。
今にも火を噴きそうな火口にいるようだ。
こんな場所になってしまったのは、
かつて女神が堕落した人間に怒り、焼き払ったからだという。
「煉獄」とは罪を浄化することだった。
以前に大司教レアは
「女神にもう一度この世界を支配してもらいたい」
そう望んだ。
女神にとって人間とはどういう存在なのだろう?
罪を犯せば容赦なく焼き殺すのだろうか。
あまりの暑さに、メルセデスは幻覚を見る。
大勢の人間が谷の上からこちらを見下ろす姿が見えるのだ。
それは幻覚ではなく、王国を裏切ったローベの軍勢だった!
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忠臣グェンダルの最後
ローベの老騎士グェンダルは死に場所を求めていた。
王国を裏切った愚かな主君であっても、
忠義をまっとうするのが騎士の道である。
巧みに挟撃戦術をとってくるが、
ロドリグの援軍が到着すると総崩れ。
最後は騎士らしく華々しく散った。
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諫言する忠臣ロドリグ
ロドリグはフェリクスの父親なだけあって、
ディミトリに対して怯むことなく意見をできる人物だった。
ディミトリの激変に対しても、ほとんど気にしない様子だ。
生まれた頃から見てきているためか、
父親のような包容力でディミトリを見ているのかもしれない。
王都で政変が起こってディミトリが処刑されたと発表された時も
すぐさま王都に駆けつけて「英雄の遺産アラドヴァル」を
取り返すほど、王家への忠誠心が高い。
今回の件も二つ返事で援軍を率いてやってきてくれたわけだが、
そこには王都奪還への期待もあった。
親友であったディミトリの父親が生きていたら、
同じことを言うだろう。
そう言ってディミトリに迫った。
しかしディミトリの意志は変わらない。
あくまでも帝国を攻める事にこだわり、
ロドリグの進言にまったく耳を貸さないのである。
……ロドリグは愛想を尽かすどころか、
自分も戦列に加えてほしいと言い出す。
突然の決断だったが、
こんなこともあろうかと領地の留守も任せてここに来ていた。
どうやら彼は、
王都奪還という利害だけで動いているわけではなさそうである。
「亡き友との約束を果たさねば……」
ディミトリの異常なまでの頑固さに、
何事か思う所があったのは間違いないが、
柔軟に自説を変えられる人物であった。
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クロードへ協力を要請
援軍と合流し軍容が整ったところで、
帝国への進軍ルートを決める軍議が始まる。
そこで出た案が、
レスター諸侯同盟の内紛を利用するというものだった。
反帝国派のリーガン家と
親帝国派のグロスタール家は
レスター同盟の主導権をめぐって争っている。
グロスタール家を支援する帝国の動きを止めるには、
国境の川にかかるミルディン大橋を封鎖するのがもっとも有効だ。
つまり、王国軍がミルディン大橋を落とすことは、
反帝国のリーガン家当主クロードにとって好都合なはずである。
そしてディミトリたちにとっては、
帝国領土侵入への足掛かりを得ることになるのだ。
ディミトリとクロードの利害が一致する!
ただしリスクもある。
ミルディン大橋を領有するグロスタール家と帝国軍から
挟み撃ちされれば、たちまち王国軍は壊滅してしまうだろう。
クロードの協力がかかせないが、
果たして良い返事を聞けるのだろうか。
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