不落要塞メリセウス。
ここを落とせばもう帝都は目の前だ。
守るのは今まで何度も戦ってきた死神騎士。
彼は最後の戦いを前に、意外な人物の名を口にする。
不落要塞メリセウス
フェルディアを取り戻したことによって、東部諸侯が中心となり、
国内はかつての「ファーガス神聖王国」としてまとまりつつある。
西部にはまだ帝国につく領主もいるが、降伏は時間の問題だという。
レスター諸侯同盟も味方に付き、
今こそアドラステア帝都を攻める絶好の時である。
敵情報告を聞きに騎士の間に詰めかけた仲間たちは、
メリセウス要塞に大規模な軍勢が入り、
死神騎士が指揮官として守っていると聞かされる。
メリセウス要塞は帝国が誇る要塞で、
「不落要塞」と呼ばれるように、今まで陥落したことがない。
もしここを王国軍が落とせば、歴史的な出来事になるだろう。
そこから帝都はもう、目と鼻の先である。
帝都侵攻への足掛かりに、これほど適した場所はない。
そういう要衝なので、エーデルガルトは死神騎士という
歴戦の強者に守らせることにした。
しかし客観的に見て、王国軍の勢いは日増しに強まっており、
メルセデスの楽観論に反対しがちなアネットさえ
「勝てそうかも」
嬉しそうに言うのだった。
エーデルガルトにその情勢が読めないはずはなく、
メリセウス要塞はいずれ落ちると考え、
死神騎士を時間稼ぎとしてそこに配置した。
エーデルガルトは時間を稼いで何を目論んでいるのだろうか。
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意外な言葉
グロンダーズ平原に着陣した王国軍。
死神騎士はメリセウス要塞に籠り、迎え撃ってくる気配を見せない。
数で圧倒しているなら兵糧攻めも考えられるが、
もろもろ考えると不利にしかならない。
ここは損害を覚悟で一気に力で攻めるしかない。
何しろエーデルガルトに時間を与えるのは得策ではないのだ。
メリセウス要塞には、
学友であったカスパルとリンハルトも招集されていた。
正門を破った王国軍が、城内になだれ込む。
カスパルは気合を入れて出陣の準備をし、
リンハルトは学生時代と変わらず、どこか眠たけだった。
そして死神騎士。
これがベレトとの最後の戦いになると、覚悟を決めたようだった。
そして意外な人物の名を口にする。
「メルセデス、貴様もここで……」
この2人の関係は何であろうか?
死神騎士の正体はイエリッツァでほぼ間違いないと結論されていたが、
彼は帝国貴族の推薦で士官学校へ赴任した経緯がある。
メルセデスも帝国出身なので、何か縁があるのかもしれない。
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死神の最後
城内に入ったものの、不落要塞というだけあってその守りは固い。
正面突破は難しいと考え、
フェリクスとアネットが東から迂回して死神騎士を誘い込み、
西側を制圧した本隊がその側面をつく作戦をとった。
西を守っていたのは学友だったカスパル。
こちらには主戦力を傾けていたため、数で圧倒して、
最後はベレトが討ち取った。
「あんたとエーデルガルトなら分かり合えると思っていたのにな」
負けたら死ぬ喧嘩だ、そう言って倒れた。
東を守っていたのは学生時代に眠そうだったリンハルトで、
気質は変わっていなかったが、戦う覚悟を決めていた。
フェリクスとアネットは王国軍屈指の戦闘力を誇っていたが、
寡兵のために手こずり、何度もベレトの時を戻す力に助けられた。
そしてリンハルトは望まない永眠をすることになってしまった。
王国軍本隊が要塞の西側を制圧し終えた頃、
東の砦を奪ったフェリクスが中央へ顔を出す。
これを見た死神騎士は、
まだ手厚い中央の部隊と合流しつつフェリクスを討ち、
王国軍本隊との決戦に備えようとした。
それが王国軍の作戦だった。
飛び出した死神騎士にイングリットとディミトリが襲いかかる。
メルセデスは死神騎士と話がしたいと何度も前へ出ようとしたが、
死神の殺気はすさまじく、少しでも近づけば殺されていただろう。
時を戻す力を使い果たしたベレトは、メルセデスを必死に止めた。
そうしている間に、ディミトリがついに死神騎士を討ち取った。
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メルセデス
結局、メルセデスと死神騎士との関係はわからなかった。
学生時代にフレンを助けた時、メルセデスは死神騎士と対面し、
「どこかで見た気がする」
そんな事を言っていたが、
正体がイエリッツァならば当然だと思って気にも留めなかった。
しかし考えてみればイエリッツァ自体が仮面をつけた謎の人物だった。
メルセデスにはエミールという弟がいたらしい。
彼はフェリクスに雰囲気がよく似ていたという。
決闘が大好きな点で、死神騎士とフェリクスはよく似ている。
イエリッツァは仮面をつけていたので年齢不詳だが、
教師としては意外と若かった可能性がある。
死神騎士とイエリッツァの正体は、
メルセデスの弟エミールだったのかもしれない。
彼女が死神騎士の亡骸を確認したかはわからない。
その事について何も語ろうとしなかった。
--。
メリセウス要塞を落とすことに成功したディミトリの元へ、
ファーガス国内の状況を知らせる書簡が届いた。
シルヴァンの父、ゴーティエ辺境伯が中心となり、
国内の紛争が片づいたらしい。
その過程で、「ダスカーの悲劇」に関与した者を捕らえたという。
証言の信ぴょう性はともかく、処遇をディミトリに決めてもらいたく、
その者を大修道院に移送したようだ。
謎多きあの事件の、新証言が聞けそうだ。
エーデルガルトとの対話のためにも、聞いておきたい。
わずかな事でも知りたい。
兵員・物資の補給も兼ねて、ディミトリは急きょ、
大修道院へ戻ることに決めたのだった。
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