EP17 鉄血の鷲獅子【FE風花雪月】

5年前と同様、グロンダーズ平原にて三つ巴の戦いを繰り広げる3人。
そこで流された血は、ついにディミトリの心を正気へと戻すのだろうか……。

かつての学友と

帝国への侵入口となるミルディン大橋を落されたエーデルガルトは
さっそく手を打ってきたようだ。

交通の要衝に建つメリセウス要塞に大規模な軍勢を集めているのだという。
危機とあらば即行動し、
しかも皇帝自らが出陣するあたり、エーデルガルトの非凡さが伺える。

レスター同盟の盟主であるクロードの行動も早かった。
ミルディン大橋を奪われたグロスタール家と早々に講和し、
諸侯を集めて帝国領への侵攻を開始したというのだ。
同盟結束のチャンスと見たのだろうか、
私情を捨てて素早く決断したクロードも非凡だった。

王国軍は精鋭ぞろいだが、兵力は最も少ない。
クロードと同盟して帝国に対峙するのが最善策のように思えるが、
良い返事がもらえるだろうか。

ミルディン大橋を渡った先に広がるグロンダーズ平原
帝国はメリセウス要塞から大軍を送ってくるだろう。
レスター同盟も他の橋から平原へと入って来る。
学生時代の一大イベント、グロンダーズ鷲獅子じゅじし戦が思い出される。

しかし今回は本当の戦争なのだ。
かつての学友と殺し合わなければならない。
あの時のようにうたげを開いて、楽しく戦いを振り返ることはあり得ない。

口々に不安を漏らす仲間たちだったが、ディミトリは
「もう慣れた」
そう言って仲間たちとの温度差を感じさせるのだった……。

陰謀

決戦を前にして、
ロドリグはどうしてもギルベルトに確認しておきたいことがあった。

9年前のダスカーの悲劇。

あの事件によって王国の凋落が始まり、
ディミトリも、ギルベルトも、自分も、みんな変わってしまった。

ランベール国王が殺され、王妃パトリシアも行方不明になった。
もしあの事件がパトリシアの陰謀であったなら?

最愛の息子グレンを失ったロドリグが調べ尽くした上での、疑いだった。

それを聞いてギルベルトは怒った
40年以上王国に仕え、
ランベールから家族たちの守護を任じられていた彼にとって、
聞捨てならない疑いだった。

彼は今でこそ大人しいが、幼いディミトリを夜中にたたき起こして突然、
「鹿を狩ってこい!」
と山に放り込むような鍛え方をする人物である。

彼がダスカーの悲劇で助けることができたのは、ディミトリだけだった。
ギルベルトにとってパトリシアは守るべき王妃であって、
守れなかった負い目こそあれ、疑うなどは到底できないのかもしれない。

しかしロドリグが言うように、ディミトリ以外は全員殺されたのに、
パトリシアの馬車だけは争った形跡なく無傷で、
しかも彼女の遺体も見つからない状況を考えると、疑う余地はあるだろう。

その時、クロードに送っていた使者が戻ったという知らせが入る。

惨殺された死体となって帰ってきた……。

真相は不明だが、いずれにしてもレスター同盟との連絡に難があり、
意思疎通ができぬまま、
グロンダーズ平原でまみえることになりそうだ。

この状況で有利になるのは帝国であり、
ディミトリに復讐するために紛れ込んでいるフレーチェであった……。

壊滅

グロンダーズ平原に、かつて級長だった3人が、
今は国を背負って対面することになった。

この地で迎撃態勢をとっていたエーデルガルトの魔法部隊が
先制攻撃の炎を降らせる。

復讐の炎に燃えるディミトリは、エーデルガルトを見てむしろ歓喜し、
全軍に突撃を命じた。

「酒ではなく血を浴びる同窓会か……」
炎に包まれた一帯を見てクロードは、ディミトリが帝国軍へ突進したのを見て、
5年前の鷲獅子戦と同じてつを踏まぬよう、南に向けて進軍を開始する。

先駆けたディミトリが中央の丘を取ったまでは良かったが、
仲間が後に続いてこない。

伏兵として現れたヒルダ軍が背後を、クロード本隊が側面を襲ってきて、
ベレト本隊が壊滅の危機に瀕していたのだ。

さらに中央の丘にはエーデルガルトの罠が仕掛けられていて、
丘全体が帝国軍もろとも炎に包まれて
ディミトリは身動きができなくなってしまう。

前にエーデルガルト軍、後ろにクロード軍。

この危機を救ったのはベレトだった。
彼が単身でクロードの大軍に飛び込み、天帝の剣を操ってクロードを撤退に追い込む。
及び腰だった仲間たちもベレトに続き、
計略の連携によってラファエルやイグナーツたちを無力化し、
フェリクスがとどめを刺す。

やらなければこちらがやられていた。
リシテアとフェリクスの最後の戦いも、攻撃を許した方が負けるという
紙一重の戦いだった。

ベレトに時を戻す力が無ければ、壊滅していたのは王国軍だったろう。

レスター同盟軍との激戦を制した王国軍は、
その勢いのままエーデルガルトの陣地へ乗り込み、
ディミトリが彼女を追い詰めていく。

しかしここは帝国領。
いざとなれば落ち延びる手はずが整っており、
エーデルガルトは敗戦を噛みしめながら撤退していった。

そう簡単に逃がすわけにはいかないディミトリ。
ロドリグが止めるのも聞かず、
その後を追おうとした、その時だった。
ディミトリの背後に、何者かが襲いかかる……!

約束

ディミトリを背後から刺したのは、
兄の復讐のため王国軍に参加していたフレーチェだった。

完全に不意を突かれたディミトリは、とどめの一撃を避ける余裕もなかった。

そこに割って入ったのがロドリグである。

ディミトリの代わりに刃を受け、致命傷を負った。
ベレトがフレーチェを始末し、駆けつけるも、
すでに息が切れかかっている。

「死ぬな!」

ディミトリは自責の念にさいなまれた。

「俺のせいでロドリグが死ぬ。俺が殺した……。
お前もまた無念のまま、あの亡霊たちの群れへ行くのか」

しかしロドリグは小さな息で、ディミトリの間違いを指摘した。

「誰もあなたのために死ぬのではない。
自分の信念のために死ぬのだ
あなたの命は誰のためのものでもない、
あなたの信念のために、お使いなさい

ロドリグが自領を留守にしてまで、ディミトリと一緒にいた理由、
それはディミトリの父ランベールとの約束を果たすためだった。

「もし息子が道を誤った時はロドリグ、その時はお前が……」

ディミトリを正しい道へと導いてやってほしい、
それが親友との約束であり、遺言であった。

ロドリグが死の直前に言った言葉は、
ずっとディミトリに伝えたかった思いだったのだろう。

死を賭して、それを伝えた。
ディミトリを立ち直らせるために。
約束を守れたかどうかは、わからない。

それを決めるのは、その後のディミトリ次第だった……。

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