帝国軍は圧倒的な軍勢でガルグ=マク大修道院に押し寄せる。
迎え撃つ大司教レアは、ベレトに後事をたくし、
巨竜に変身して敵陣へ突っ込んだ。
絶対に負けられない戦いだった。
歴史的大事件
帝国軍の侵攻が2週間後に迫っていた。
ガルグ=マクだけでなく、フォドラ全土を揺るがす、
歴史的な大事件である。
自ら出陣する覚悟を決めた大司教レアは、
万一のことがあった場合、ベレトに自分の代わりを務めるよう頼む。
出会って1年にも満たない若者に、大修道院を任せる……。
さすがに言い過ぎではないのか?
たまりかねたセテスはレアにすべてを打ち明けろと迫る。
レアはベレトの体を器として、
神祖を復活させるという禁忌を犯したらしい。
神祖とはもちろん、女神ソティスのことである。
「再び神祖が地上を支配する瞬間を待ち望んでいる」
レアはそう言って、セテスにも彼女を助けてほしいと頼んだ。
つまりレアは、ベレトその人ではなく、
女神ソティスに語りかけていたということだろう。
悲願
ついに帝国軍がやってきた。
圧倒的な兵力差だったが、青獅子の生徒たちの士気は高い。
そんな中で気分が悪そうにうつむくディミトリ。
幼い頃のエーデルガルトとの思い出が、脳裏にあるのだろうか。
家族や仲間の仇……。
あの日、生きる希望を無くした彼を、
再び立ち上がらせた生きる目的。
死者たちの無念を晴らす。
エーデルガルトを殺すことこそ、彼の悲願なのだ。
「気分など悪くない、俺は喜んでいるんだ……!」
静かにそう言うのだった。
執念
エーデルガルトが先陣を切って自ら城郭内に攻め込んでくる。
皇帝のこうした姿勢が、帝国軍の士気を旺盛にしている。
受けて立つ防衛側も大司教レアが自ら出陣した。
特に青獅子の生徒たちの活躍が目覚ましく、敵を次々と撃退していく。
痺れを切らしたエーデルガルト本隊が自ら前線にやってきたが、
ディミトリの執念は凄まじく、激戦の末ついに撃退に成功する。
しかしこれは帝国軍の先陣に過ぎない。
エーデルガルトの伯父アランデル公が指揮する大軍がまだ控えていた。
本格的な侵攻が始まれば、
大修道院が陥落するのは時間の問題だろう……。
巨竜
ガルグ=マクの総力をもって要所要所で防衛するものの、
帝国軍は第2波第3波と戦力を繰り出してくる。
籠城するための物資も足りず、
戦えない者を避難させる撤退戦をせざるを得ない。
生きてさえいれば、いつか再起を図れるかもしれない
ガルグ=マクに殉ずる覚悟のレアは
竜に変身して敵陣に突っ込み、
ベレトが指揮する撤退を援護した。
この力もまた、女神の力なのだろうか。
怒り狂う巨竜に帝国軍は逃げ惑うのだが、
そこに帝国軍の魔獣部隊が襲いかかってくる。
竜であっても複数の魔獣が相手だと分が悪く、
あちこち噛みつかれてレアは悲鳴を上げた。
見かねたベレトが駆けつけ、
天帝の剣で魔獣を一体仕留めると、竜は再び立ち上がった。
「なぜ助けに来たのです?」
レアは自分のことよりも、ベレトや生徒たちを案じたのかもしれない。
その心配は当たり、待ち構えたようにタレスがそこにいた。
狙いすました魔法攻撃がベレトに直撃する。
その威力は強力で、どんどん吹っ飛ばされ、
ついにベレトは崖の下へと深く落とされてしまった……。
陥落
ついにガルグ=マク大修道院は陥落した。
その余波をもって
ファーガス神聖王国とレスター諸侯同盟領への侵攻を開始。
三国による均衡は崩れ、
アドラステア帝国によるフォドラ統一の大事業が開始された。
レアの姿は、どこにもなかった……。