EP22 短剣の誓い【FE風花雪月】

すべてを懸けた両軍の激突。
最後の戦いは想像を絶する激闘となった。
ディミトリの想いに、エーデルガルトの出した答えは--。

覇骸

最後の戦いを前にして、仲間たちがディミトリの元へ集ってくる。
過去の気持ちは断ち切った。
皇帝エーデルガルトを討つ!
2人はそういう運命だったのだと、
ディミトリは自分に言い聞かせ、仲間たちを鼓舞した。

仲間たちもディミトリに応え、
絶対に負けられないとの思いで団結し、気持ちはひとつになった。
この戦いで、長かった同窓会も終わりだ。
一人も欠けることなく、また会いたい。
「勝とう!」
ベレトの言葉を合図に、仲間たちは決戦場へと進んでいった。

一方、エーデルガルトは「覇骸はがい」を名乗り、
禍々まがまがしい姿で、ディミトリたち王国軍を待ち受けていた。

エル

玉座の間は目の前だったが、
どこからともなく魔法攻撃が降ってくる気配があり、
王国軍は二手に分かれて迂回することにした。
西の部隊はベレトが率い、東の部隊はディミトリが率いた。

--東の戦線。
東の中庭へ威力偵察に向かったイングリットは、
帝国軍とは別の魔法部隊がいることに気付く。
それはミュソンと呼ばれる魔導士が率いているようだ。
彼は恐ろしい魔法を使ってきた。

ボーアXという魔法攻撃を受けたギルベルトは瀕死の致命傷を負い、
危うく命を落とすところだった。

アネット、フェリクス、ディミトリ、フレンが協力して
ギルベルトを守り、イングリットがミュソンの懐に飛び込んで仕留めた。

ミュソンの死は配下たちによほどショックを与えたらしく、
「我らの意志を根絶やしにしてはならない!」
そう言って退却していった。

人間のことを「けもの」と呼ぶのは
タレスたち「闇に蠢く者」と共通している。
この魔導士たちもその一派なのだろう。

東の戦線はミュソンの死によって戦いやすくなったが、
覇骸エーデルガルトからの魔法攻撃が降り注ぎ、
弓砲台からも矢が降り注ぎ、
その上で強力な魔獣に足止めされる状況を打破できずにいた。

その時ギルベルトが単身で魔獣に突っ込んで障壁を破り、
あとにディミトリ、フェリクス、イングリットが続く。

魔獣を仕留めることには成功したが、犠牲は避けられなかった。
ギルベルトは重傷を負い、戦線を離脱してしまう。

それでも一番の難所を越えることができたため、
東の部隊はそれ以降、順調に進軍することができた。

ところが、玉座の間が近づくのに、敵の攻撃がさほど来ない。
ディミトリたち東の部隊に安堵が広がったその頃、
ベレトたち西の部隊は、猛烈な敵の総攻撃を受けていた……。

--西の戦線。
ベレトたちは計略を駆使して敵を足止めしつつ、
なんとか玉座の間の近くまで進軍していたが、
止むことのない遠方からの魔法攻撃が激しく、
それ以上なかなか進めない。

セテスにはある心配がよぎっていた。
後方支援を担当する妹フレンが、
この攻撃に狙われればひとたまりもないのではないか?

アッシュ部隊から「聖盾」のおまじないを受けると、
セテスは単身で玉座の間へ奇襲をしかけ、
そこを守っていた魔道部隊の攻撃を一身に集めた。

これによって膠着こうちゃくしていた戦況が一気に動く。
ベレト、シルヴァン、メルセデス、アッシュ、レオニーが
焦って近づく敵を総力を上げて迎撃、敵に壊滅的な損害を与える。

セテスの特攻によって、この戦いの勝利は決定的になった。
しかし、その過程でセテスだけでなく、
アッシュ、メルセデスも非業に倒れてしまった……。
それほど帝国軍の意地と抵抗は、凄まじいものがあった。

黒鷲、青獅子、金鹿、あの年の生徒たちが等しく犠牲となった
この戦争を終わらせなければならない。

宮城を制圧したディミトリは、
ただひとり残る覇骸エーデルガルトにとどめを刺した--。

ディミトリの一撃によって
「覇骸」から人の姿に戻ったエーデルガルト。
彼女は力なく、うなだれている。

「エル……」
そう言って手を差し伸べるディミトリに、
エーデルガルトはわずかに微笑んだ。

しかし、その手を取ることはなかった。
短剣を取り出すと、それをディミトリに投げつける。

それと同時に、ディミトリの槍が、エーデルガルトにとどめを刺した。

……これで、この戦争は終わった。
ベレトが歩き出す。
ディミトリは腕に刺さった短剣を、
幼いころ彼女に贈ったあの短剣を床へ捨て、
ベレトを追って歩き出した。

扉を開けると、宮城の外は光に満ちていた。

エーデルガルトはあの短剣で、自分を殺そうとしなかった。
彼女は何かを伝えようとしていたのではないか?
どうして気付かなかったのだろう。
そう思った時、ディミトリの足が無意識に止まった。

彼女の顔を、もう一度だけ見たい。
思い出の短剣を、最後まで持っていた意味。
すがるようなその想いが、
エルの顔を見て確信に変わるはずだった。
それなのに、ベレトの手がそれを止めた。
……。
悲しげなその顔を見て、ディミトリはすぐに悟った。
自分がまた、とらわれようとしていたことに。

その時ディミトリは、
胸をえぐられるような想いをすべて飲み込んだ。

歓声を上げる人々の声が、外から聞こえてくる。
2人を待っているのだ。
ベレトは何も言わず、前へ歩き始めた。
ディミトリは遅れることなく、その後に続いた--。

その後

帝都が陥落したことによって、アドラステア帝国は滅亡した。
ディミトリはファーガス神聖王国の王位を正式に継ぎ、
フォドラを統一する。

弱者が虐げられることのない平和な世の中を目指して、
新たな治世に踏み出すディミトリ。
それを支えたのは、
新たにセイロス正教会の大司教となったベレトだったという。

挫折を乗り越え、数々の別れを経験したディミトリならば、
きっと良い方向へ導いてくれる。
人の痛みを知る、彼ならば!
人々は期待し、新たな世の始まりに希望を持つのだった。

FIN

1180年の卒業生の主な犠牲者
黒鷲の学級
エーデルガルト、ヒューベルト、
ドロテア、フェルディナント、
カスパル、リンハルト

青獅子の学級
メルセデス、アッシュ

金鹿の学級
ローレンツ、ラファエル、
リシテア、イグナーツ

その他
ギルベルト(ギュスタヴ)、セテス、
ロドリグ、ジェラルト

ベレトは、レアより大司教の座を
譲り受けると同時に、
イングリットとの婚姻を発表。
二人は王国と協力しつつ、
フォドラの復興と発展に注力し、
多くの事績を残した。
イングリットは伴侶として大司教の公務を献身的に支えるだけでなく、
セイロス騎士団の聖騎士の称号を得て
大司教の身を守った。
大司教が暴徒に襲われた際には、
傍らにいた彼女が武器を取って
撃退したという逸話も残っている。
戦争を終結に導いた大司教と、
妻として騎士として
彼に尽くしたイングリットの生は、
物語となって後世に語り継がれた 。
アネットは故郷フェルディアに戻り、
魔道学校の講師として教鞭を執る。
のちに彼女は指導者として大成し、
後世に名を残すほどの大魔導士を
幾人も育て上げた。
彼らの誰もが、アネットの明るい人柄と、
才能に驕らぬ姿勢を敬い、
その教えに感謝していたという。
シルヴァンは新たな
ゴーティエ辺境伯として
その生涯をスレン族との
関係改善に捧げた。
遺産と紋章を必要としない
貴族の在り方を、
その弁舌のみで築いた彼は、希代の名領主
として名を残す。
一方で、浮気者を
”ゴーティエの放蕩息子”
と呼ぶ慣習も後世に残した。
フェリクスはフラルダリウス公爵として
領地の復興に注力する。
それを成し遂げた後は、
王の右腕となって、
軍事をはじめ多くの面で
彼の力となった。
そんなフェリクスを、
亡父ロドリグになぞらえ
”ファーガスの新たなる盾”
と呼ぶ者もいたという。
ディミトリは正式に戴冠を受け、
ファーガス神聖王国の王位を戴く。
王座のそばには、常に従者ドゥドゥーの姿があった。
ディミトリの残した業績の中で、
特筆すべきはダスカーの民との融和を成したことであろう。
裏切りと迫害の歴史を断つには並々ならぬ努力を要したが、
彼は決してあきらめようとしなかった。
二人は余人の前では主従としての振る舞いを貫いたが、
家族のように信頼し合っていたという。
やがてディミトリは病を得て倒れるが
ドゥドゥーは王の眠る墓所を生涯守り、
没した後はその傍らに葬られたとされる。

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